仏教には数多くの宗派が存在し、宗派によって葬儀における作法・マナーが異なります。
間違った認識で葬儀を執り行うと、知らず知らずのうちにマナー違反となる行動をしたり、参列者に不快な思いをさせてしまったりするおそれがあるため、各宗派の特徴を事前に理解しておくことが重要です。
そこで今回は、葬儀における「宗教・宗派」の概要や、仏教の主な宗派や葬儀の違いを詳しく解説します。最後に、宗派が分からない場合の対処法も紹介しているため、ぜひご覧ください。
目次
1. 葬儀の「宗教・宗派」とは?
葬儀は、宗教や宗派によって内容や作法・マナーが大きく異なります。知らず知らずのうちにマナー違反となる行動をとったり、参列者に不快な思いをさせたりしないためにも、まずは各宗教の種類について理解を深めておきましょう。
主な宗教には、下記4つの種類があります。
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仏教
仏教は、故人の冥福を祈るために葬儀を行うことが特徴的な、日本国内の大多数を占める宗教です。葬儀を執り行う場所は、主に寺院・斎場となります。
仏教には非常に多くの宗派があることも特徴であり、文化庁の「宗教年鑑(令和4年版)」によると、日本においては2021年末時点で156の仏教宗派が存在していることも分かっています。
(出典:文化庁「宗教年鑑(令和4年版)」
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/hakusho_nenjihokokusho/shukyo_nenkan/pdf/r04nenkan.pdf)
仏教による「仏教式」の特徴 |
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神道
神道は、仏教と肩を並べるほど多くの人が属している宗教です。死の穢れを清めるため、故人を家に留めて守護神とするために葬儀を行うことが特徴で、故人をあの世に送り出す仏教とは考え方が真逆となっています。
そして、神道には他宗教にはない独自の儀式「神棚封じ」があります。死の穢れが神棚を通じて神様に届かないように封じる儀式であり、遺族以外の人や葬儀社が執り行うことが一般的です。
神道による神葬祭の特徴としては、下記が挙げられます。
神道による「神葬祭」の特徴 |
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キリスト教
キリスト教は、日本ではほとんど見られない少数派の宗教です。大きくカトリック派とプロテスタント派の2宗派があり、考え方や聖職者の呼び方が異なります。
キリスト教による儀式の特徴 |
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無宗教
無宗教は、その名の通り宗教にとらわれない考え方を持つ宗教です。日本国内における割合も非常に少ないため、無宗教があること自体を知らないという人も多いでしょう。
無宗教の最大の特徴は、葬儀に決まった形式がない点です。読経がなかったり、故人が好きだった歌を流したりなど、自由な葬儀を実現できます。
一方で、どういった流れで葬儀を執り行うのかについては遺族間で十分に話し合う必要があるなど、「決まりがないからこそ大変」とも言えるでしょう。
無宗教による儀式の特徴 |
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2. 仏教における主要な宗派の種類|葬儀における作法・マナーの違いも
前述の通り、仏教には2021年末時点で156の宗派があります。その中でも、下記8つの宗派は仏教における代表的な宗派の種類となっています。
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ここからは、各宗派における葬儀の作法・マナーを詳しく紹介します。
2-1. 天台宗
天台宗の葬儀は、「顕教法要」「例時作法」「密教法要」の3段階で執り行われることが特徴です。
顕教法要 | 故人の生前の行いに対して懺悔を行う |
例時作法 | 故人が極楽浄土へ行けるように阿弥陀如来に救いを求める |
密教法要 | 「光明真言」を唱え本尊を供養する |
天台宗の葬儀における基本的な作法・マナーは、次の通りです。
基本的な作法 | 焼香は基本的に3回だが、天台宗は回数を明確にしていないため、3回でないこともある |
香典の書き方 | 四十九日前:「御霊前」
四十九日後:「御仏前」 |
天台宗で使用する数珠は、一般的な真ん丸の玉が連なったものではなく、楕円形の玉が連なったものを使用します。
2-2. 日蓮宗
日蓮宗は、法華経という教えを重要視する宗派で、葬儀では参列者全員で題目を唱えることが特徴です。
また、日蓮宗では戒名のことを法号と呼ぶため、葬儀で授戒の作法もありません。生前に法号を受けるのが本来の流れですが、近年は亡くなってから受けるケースが多く見られます。
日蓮宗の基本的な作法・マナーは、次の通りです。
基本的な作法 | 焼香の作法は3回が正式となっているが、会葬者の人数によっては1回となることもある |
香典の書き方 | 四十九日前:「御霊前」または「御香典」
四十九日後:「御仏前」または「御香典」 |
2-3. 真言宗
真言宗は、平安時代に空海によって開かれた宗派です。真言宗の葬儀では、「灌頂」「土砂加持」という他宗派にはない儀式を行います。
灌頂は、故人の頭に水を注ぎ、故人が仏の位に入るようにする儀式です。そして、土砂加持は苦悩を取り除く効果があるといわれている土砂を洗い清め、護摩をたいて本尊前で明真言を唱えます。
これらの個性的な儀式以外で、真言宗の葬儀においておさえておくべき作法・マナーは、次の通りです。
基本的な作法 | 焼香は3回
数珠は玉が108個連なった本連を使用するが、他宗派と共通で使える略式数珠でも可能 |
香典の書き方 | 「御霊前」または「御香典」 |
2-4. 浄土宗
浄土宗は、阿弥陀仏の力によって仏の救済を受けられるという教えを重要視する宗派です。浄土宗の葬儀において南無阿弥陀仏は非常に重要な要素となるため、参列者も念仏を唱えます。
そして、浄土宗の葬儀で忘れてはならないのが「下炬引導」という儀式です。2本の松明や線香を使って行う儀式で、故人の往生を祈ります。
浄土宗葬儀の主な作法・マナーは、次の通りです。
基本的な作法 | 焼香の回数に決まりがない(基本は3回) |
香典の書き方 | 「御香典」「御香料」「御霊前」 |
2-5. 浄土真宗本願寺派
浄土真宗本願寺派は、「阿弥陀如来の救いを信じていれば、無事に極楽浄土に行ける」という教えを重要視する宗派です。
故人を供養する必要がないため、葬儀は故人のために行うのではなく、阿弥陀如来に感謝をするために行うという認識で執り行われます。
さらに、亡くなった人に死装束を着せたり、塩で清めたり、「告別式」という単語を使わなかったりといった独自のルールがあるところも浄土真宗本願寺派の特徴です。
浄土真宗本願寺派には、次のような作法・マナーがあります。
基本的な作法 | 清め塩が不要
告別式、戒名、冥福を祈るなど、控えるべき言葉が多数ある 焼香は額におさず、1回だけ香炉にくべる |
香典の書き方 | 「御仏前」または「御香典」 |
2-6. 真宗大谷派
真宗大谷派は、浄土真宗の宗派となります。浄土真宗より他力本願の考えが強く、阿弥陀如来を信仰していれば念仏を唱えずとも成仏できるという教えに従っていることが特徴です。
浄土真宗と同様に、死装束と清め塩は用意しません。代わりに、葬儀の時は故人が愛用していた服を着せることが一般的となっています。
真宗大谷派におけるその他の葬儀作法・マナーは、次の通りです。
基本的な作法 | 焼香を額におさず、そのまま香炉にくべる
焼香の回数は2回 |
香典の書き方 | 「御仏前」または「御香典」 |
2-7. 臨済宗
臨済宗の葬儀には、「亡くなった人が仏の弟子として修行の道に入り、自身の仏性に目覚める儀式」という意味があります。そのため、臨済宗の葬儀は授戒の儀式と引導の儀式の2つが中心となって執り行われるのが特徴です。
臨済宗の基本的な作法・マナーには、次のような内容が挙げられます。
基本的な作法 | 焼香は、額におさず香炉にくべる
回数は宗派によって異なり、大多数が1回 |
香典の書き方 | 四十九日前:「御霊前」
四十九日後:「御仏前」 |
2-8. 曹洞宗
曹洞宗は、「葬儀を行うことで亡くなった人が仏の弟子となる」という考えをもつ宗派です。そのため、葬儀前半は故人を仏の弟子にする「授戒の儀式」、葬儀後半は故人を仏の世界に導くための「引導の儀式」が行われます。
また、葬儀で「鼓鈸三通」という儀式が行われることも、曹洞宗ならではの特徴です。僧侶が楽器のようなものを使用し、盛大な音で故人を送り出します。
曹洞宗におけるその他の基本的な作法・マナーは、次の通りです。
基本的な作法 | 焼香は2回で、1回目は額におして香炉にくべ、2回目はそのまま香炉にくべる
会葬者が多い場合は1回だけとなるケースもある |
香典の書き方 | 「御霊前」または「御香典」 |
3. 宗派が分からない場合の調べ方・決め方
葬儀を執り行う上で、宗派は必要不可欠な情報です。宗派が決まらなければ葬儀を執り行えないため、事前に宗派を調べたり決めたりする必要があります。
宗派が分からない場合は、まず宗派を調べるとよいでしょう。自身の宗派の調べ方には、主に次の3通りがあります。
(1)親戚に確認する
(2)お寺に確認する (3)仏壇の位牌・戒名、お墓に使われている文字を確認する |
宗派は親族で統一しているケースも多いため、まずは親族に尋ねてみるのが一案です。それでも分からなかった場合は、今までの葬儀でお付き合いがあったお寺に確認をしてみるとよいでしょう。自宅にある仏壇の位牌や戒名、お墓にある文字から宗派を知ることも可能です。
また、宗派が決まっておらず自分で決めたいという場合は、次のポイントを踏まえて検討することをおすすめします。
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まとめ
宗教の種類は、大きく分けて4種類です。その中でも日本国内で大多数を占めるのが仏教であり、150を超える宗派が存在します。今回は、数ある宗派の中から主要な8つの宗派について紹介しました。
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